
LNG火力=クリーンエネルギー…石炭火力発電とどう違う?
電力自由化を受けて、2016年1月から続々と各社が電気料金プランを打ち出してるね。セっちゃんのお宅は電力会社をどう選択することになってるの?
そうね、ダンナともそんな話ばかり最近してるんだけど・・・電気料金が安いことはもちろん大事。でも、あんまり大きく変わらないようなら、環境問題をちゃんと加味して考えたいのよね。地球温暖化とか二酸化炭素排出量とか、やっぱり気になるもの。
お子さんのいる家庭ほど、またシニアのご夫婦ほど、環境配慮を大事に電力会社を選びたいというデータが出ているね。やはり子供にキレイな空気を吸える社会を残したいという想いが強くなるみたいだ。
新電力の環境配慮も意外と無視できない
でも、2016年現在で日本の電源って火力発電がほとんどでしょう?どの会社から電気を買っても環境的にはあまり関係ないんじゃないの?なんてダンナとは話してるのだけど・・・。
例えば旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)は、関連会社のHTBエナジーが大分県別府温泉の地熱発電技術を使って電力販売を行うみたいだね。ホームページ上でも、「再生可能エネルギーやLNG火力発電等のクリーンエネルギーを中心とした電源の開発」を宣言し、地球環境問題に積極的に取組む電気事業者となることを目指すと明記されているね。
そういえば伊藤忠エネクスホームライフは再生可能エネルギーで電源の27%以上を賄うとか、環境配慮はかなり進んでいるって話ね。風力発電が強いって話だったわ。あと、ソフトバンクはものすごい数のメガソーラーを保有して大量の再生可能エネルギーを作っているわね。
メガソーラーの保有という意味では、エフビットコミュニケーションズなんかもすごいよね。他にもイーレックスはPKSバイオマス発電に力を入れていたり、F-powerは二酸化炭素排出係数が新電力の平均の半分って話だよ。
新電力の中でもクリーンエネルギーを重視しているかどうかには、かなり各社で差があると思っていいみたいね!
さらに、同じ火力発電でも、LNG火力発電か石炭火力かによってCO2の排出量には相当量の違いが出る。ただ火力電源かどうかというだけでなく中身も見て選ばないといけないね。
火力発電なのにクリーンエネルギー?LNG火力の電源としての魅力
石炭だろうが石油だろうが、LNG(液化天然ガス)だろうが、結局火力発電って二酸化炭素とか温室効果ガスを出すんでしょう?
そうだね、太陽光発電や風力発電、原子力発電のようにはいかない。でも、石炭火力は「CO2排出源単位」と言う係数が、LNGコンバインド火力発電のおよそ2倍。二酸化炭素排出という意味では、環境負荷が2倍あると言っても過言じゃないんだ。
えええ2倍ってすごい違いね!!石炭これ以上使っちゃダメじゃない!
石炭は二酸化炭素以外にも、SOx(硫黄酸化物)、ばいじん、水銀といった物質を排出してしまう。発電のあとには、石油やLNGからは出ない灰も出る。別の環境破壊にもつながりかねないんだよね。
LNG火力なら、これらの有毒物質を排出しないってこと?
そう。(1)石炭が出してしまうような、水銀をはじめとするこれらの環境汚染物質はLNGからは出ない。実際、LNG火力は石炭火力と比べていろんな効率が良く、クリーンエネルギーと呼ばれるだけの理由はいくつもある。例えば、(2)石炭や石油と比べてコンパクトなスペースで済むので、都心の近くにもLNG火力発電所を作ることは難しくないんだ。そうなると、火力発電で生まれた熱を再利用しやすくなるんだよ。
確かに、人が全く住んでいない地域だとその熱ってただの排熱になってしまうものね。地球温暖化に直接ダメージいっちゃいそうだわ。
他にも、(3)LNG火力は再生可能エネルギーとの相性がいいんだ。石炭火力はON/OFFを頻繁にすると発電効率が一気に下がって経済性を確保しにくい。LNGは逆にON/OFFの切り替えがしやすい。
それが再生可能エネルギーとどう関係するの?
再生可能エネルギーって、太陽光発電にしろ風力発電にしろ、気候・天候に激しく左右されるよね。だからベース電源たりえないなんて言われるんだけど、日照量が確保できなかったり風がちゃんと吹かなかったりした時に、LNG火力をONにするとか。ギラギラ晴れてる日はLNG火力の出力を抑えるとか。そういう使い方もできるんだよ。
なるほど!そして、(4)二酸化炭素の排出量もLNGコンバインドなら石炭の半分なのよね。ますます石炭火力よりLNG火力の方がいい気がするのだけど・・・それでも石炭火力を使い続けないといけない理由があるってことなんでしょう?
二酸化炭素出しすぎ!?石炭火力は本当に環境に悪いのか
火力発電って昔は石油で発電しているイメージだったけど・・・。
1970年代のオイルショックあたりから、石油とLNGの価格が一気に上昇してしまったんだ。それまでは石炭の方が高かったんだけどね。(1)石炭火力はとにかく価格面で優位性がある、つまりコストが抑えられるし、石油やLNGのように価格が激しく変動しない。当然僕らが払う電気料金も安く抑えられるんだ。
家庭の電気料金を安く抑えてくれてると思うと、簡単に辞めるわけにはいかないわね・・・。もちろんオフィスビルや工場なんかの電力コストにも関わるものね。
さらに、(2)エネルギーセキュリティと言う面でも石炭は優秀なんだ。石炭の輸入先はオーストラリアが半分以上、次いでインドネシアで、これでほとんどを賄っている。石油やLNGのように輸送ルートが不安定でもないし、歴史的に国の情勢も安定している。日本との関係もいい。
電気の供給って一番大事なのは安全・安心・信頼だものね。じゃあ、石炭火力をどうにかうまく利用する方法はないのかしら?
石炭火力を、環境負荷を下げつつ効率的に?
実はそういう研究はいくつも進んでいるよ。例えば、石炭が排出してしまう二酸化炭素の排出量は確かに多いけど、発電効率を高めることでチャラにできる部分もあるよね。
どういう意味かしら?
2倍の環境負荷をかけているとすれば、その分2倍の電力を発電できればトントンだよねっていうこと。実際、日本の火力発電の発電効率は世界的にもかなり高い。他の国の石炭火力と同じに考えられちゃ困るぐらいなんだ。他にも、その発電に使った熱の再利用がうまくできれば、そっちの面で環境負荷を下げることもできる。
なるほど、石炭火力発電そのものに限界はあるとしても、効率を高めることで解決できる問題もありそうということよね。そこは日本の技術力に期待したいわね。
上記で話した有害物質のSOxやNOxの排出量(火力発電由来)は、日本は世界最低水準になってる。石炭火力にもまだまだ改良の余地があるということがわかるね。そしてさらにすごいのは、CO2排出ゼロの火力発電所というのが、2035年には実用化されると言われてるんだ。
ええっ?!だって石炭火力は二酸化炭素の排出量が一番多いってさっきまで・・・!?
「CO2回収型次世代IGCC(石炭ガス化複合発電)技術」というのが開発されているんだ。僕も専門外で詳しく理解はできていないのだけど、一度出してしまう二酸化炭素を回収・圧縮する技術みたい。
やっぱり日本ってすごい国なのね・・・!
石炭発電から出る灰については、例えばコンクリートに再利用する技術も開発されてるよ。
せっかくコスト的にもエネルギーセキュリティの観点からも優位性があるんだから、石炭火力にももっと頑張ってもらわないといけないわね。
電力会社を選ぶときには、火力電源がどのぐらいの割合になっているかだけでなく、石炭・石油・LNGの内訳や、さらに環境に対する取り組みをどうやっているかを詳しく見てみることにするといいね。